#軽井沢から通勤するIT系会社員のブログ

2015年4月から軽井沢-東京で新幹線通勤中。遠距離通勤やテレワークの話題を中心に綴ります。軽井沢移住の裏話も。

誰も語りたがらない、軽井沢にある「世界レベルの公害」の話

軽井沢での生活について情報発信して4年が経つ。

 

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ブログやTwitterからは見えにくいかもしれないが、この暮らしを続けている上で、いろいろと苦労していることもある。良くも悪くも、インターネットでは自分も含めて、「知りたい情報」しか検索して調べない傾向がある。知らずに、表面的なことや、キラキラした面しか見えなくなってしまう(あるいは、見たくないのでその部分しか見ていない)ことがあるんだと思う。

 

読者の方には、軽井沢へ移住することを本気で検討している人もいると思うので、失敗しない選択をするための一助になるよう、今回は、軽井沢暮らしのリアルなダークサイドについて書いてみようと思う。今回のブログでは、軽井沢に住んでいると見えてくる、「公害」の話。

 

 

 

軽井沢にある公害は世界レベル

 

挑発的なタイトルで始めてみたが、軽井沢には、この土地ならではの公害がある。それは「観光」である。

 

観光産業によって住民の生活に悪影響が出ることを、「オーバーツーリズム」や「観光公害」と呼ぶことがある。 

 

これは軽井沢が特別というわけではなく、世界的にも見られる傾向だ。以下記事よりいくつか引用。

 

スペイン・バルセロナやイタリア・ベネチアなどでは、観光客排斥のデモが相次いでいる。 1992年に開催されたオリンピック以後、観光客誘致を推進してきたスペイン随一の観光都市バルセロナは、2016年に年間3200万人の観光客が押し寄せた(世界観光指標)。わずか160万人の人口と比較すると、ざっと20倍という数字だ。バルセロナ市が行っている調査では、「市民が困っていること」のトップが「失業の悩み」から「観光客に関する悩み」に代わった。

 

この記事では、観光客数を住民の数で割ったものを、「交流人口比率」としており、日本でも「オーバーツーリズム」の問題を抱えている鎌倉市や京都市などの数値を出している。表にするとこんな感じになっている。

 

 

軽井沢の交流人口比率は桁外れ

 

これらの都市に対して、軽井沢の観光客数は年間840万人(軽井沢町による平成29年統計より)。ただ、軽井沢町の人口は、たった約2万人程度なのだ。

 

ここから交流人口比率を出してみると、なんと420倍。これは京都鎌倉を軽く超え、すべての観光地を調べたわけではないけれども、おそらく日本一であろう。ヨーロッパで人気のベネチアやバルセロナでさえ、80倍と20倍ということを考えると、もしかしたら、世界でも戦えるレベルなのではないかという水準だ。軽井沢は、世界的なオーバーツーリズム都市といえる。 すごいな世界の軽井沢。

 

実際に軽井沢町にとって、観光産業は大きな稼ぎ頭。売上高で上位の産業を見ると、「卸売・小売業」、「建設業」、「宿泊・飲食サービス業」と並ぶ。小売と宿泊飲食で半分近くの売上だから大したものだ。

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出典:RESUS 全産業の構造 / ポートフォリオ - RESAS 地域経済分析システム

 

製造業に依存する隣の御代田町(これが普通の田舎の姿ではある)と比べるとその特異さがわかる。

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出典:RESUS 全産業の構造 / ポートフォリオ - RESAS 地域経済分析システム

 

 

話が少し横道にそれるが、軽井沢には労働力不足の問題もある。この840万人の旅行客に対してホスピタリティサービスを提供しているわけなので、人口2万人の軽井沢は慢性的に働く人が足りない。近郊の御代田町、佐久市、あるいは高崎から新幹線で通勤している人もいるくらいだ。

 

ただし、軽井沢で稼ぐことの難しさもある。それは、ピークシーズンとオフシーズンの差が激しいということだ。以下はGoogleで「軽井沢 観光」と検索された回数の推移。これは5年間の推移なので、夏にピークがあり、冬に大きく落ち込むことがわかる。その差は、ときに5倍から10倍にもなる。

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「京都 観光」と比べるとそのアップダウンが顕著になる。軽井沢、夏は人多すぎ。冬は稼げなさすぎ。

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冬の間は人が来ないため赤字になることから、個人の飲食店や小売店はクローズしてしまう所も多い。そうすると、雇われる側としては、通年で働けなくなることもあり、安定した収入を得るのが難しい。軽井沢だけではなく、夏と冬で観光事情が大きく変わる旅行先では共通した悩みではあるが、それにしてもこのギャップが大きすぎるため、単純に労働力を増やせばいいわけでもないのが難しいところだ。

 

 

軽井沢のオーバーツーリズムと交通渋滞

話をピークシーズンに戻す。この420倍による影響は、住んでみるといろいろ実感できるのだが、一番わかりやすいのは交通渋滞だ。

 

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プリンス通り

 

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中軽井沢

 

地元で生活をする立場としては、ピークシーズンや休日には、こういった渋滞がどこで頻繁に起きるのかをきちんと把握しておく必要がある。旧軽井沢あたりにはとてもでないが近寄れない。

 

 

車が多いと、当然ながら事故も多い。地元の人が走り慣れた道を行くような普通の田舎と違って、軽井沢には県外から来る車だったり、レンタカーも多いので、そういった点からも事故が発生することは避けられない。 

 

このようなシーンには頻繁に遭遇するので、もしかしたら東京のような都市部よりも事故のリスクは高いのではないかと思うことがある。

 

 

ツルヤ軽井沢店を避ける理由

 

プライベートブランドやお土産物の品揃えなど、こぞって絶賛されている、信州の有名スーパー「ツルヤ」。いつもお世話になっているだけに、 こういう批判的な書き方をするのも抵抗があるが、この際はっきり言っておく。ツルヤ軽井沢店は、正直、あまり好きではない。

 

渋滞問題に加えて、マナーの悪さで観光地の治安が悪化するケースがあるが、「ツルヤ軽井沢店」はその極端な例のひとつとして挙げられる。

 

先日、バス会社が地元のスーパーであるツルヤ軽井沢店の駐車場入口につけていた。入出庫する車も多く、一番交通量が多い場所に停められていたため、出入りするタイミングで事故が起きそうになっていた。

 

数が多くなれば、こういう悪質なツアー業者もいくつか出てきてしまうのはやむを得ないのだろうか。スーパー利用者にとっては、勘弁してくれよというところである。 実際に、自分と同じように感じていて、このツイートに同意し、バス会社を非難するコメントが相次いだ。

 

こういった非難の声は、ツルヤ軽井沢店の隠れた事情を知ると、理解できる。実は、ここ、おそらく軽井沢町内でいちばん事故が多いスポット。

  

軽井沢に住んで生活をしているとこういったケースをよく見るので、自然とハイシーズンのツルヤ軽井沢店は避けるようになる。車は、ぶつけたくないしぶつかりたくもない。土地柄、高級外車やクラシックカーも走っているので、運が悪いとぶつけたときの修理費もバカ高くなるだろうし、尚更そう思う。

 

こういった事情に詳しくなると、「ツルヤに自転車で行けるから中軽井沢を選んだ」「中軽井沢より東側に近づきたくないので借宿以西に移住した」という人がいるのもわかる気がする。

 

 

観光公害が軽井沢町の魅力を下げる

 

旅行先として人気の軽井沢ではあるが、こういった観光公害は、住民だけではなく、旅行者にとってもマイナスだと思うし、軽井沢のブランドイメージを下げることになる。

 

 

人気の飲食施設などは、1時間以上待たされることもある。せっかく都会の喧騒を離れて信州に来ても、騒がしいまま1日が終わってしまう。

 

 

余談ではあるが、この際にきっぱり言っておくと、このオーバーツーリズムについて「訪日外国人旅行者の急増」を理由に挙げる論調が多い気がするが、軽井沢で実態を見ている身からすると、別に悪いのは外国人旅行客だけではない。国籍にかかわらずマナーの悪い客や運転の荒いドライバーはいるし、ゴミ出しのルールを守らず放置して帰る別荘族もいる。

 

なので、そのあたりの、いわゆる外国人に対するヘイトスピーチを助長する意図はないことを明確に述べておく。 
 

観光客は来るな、という問題ではない  

軽井沢住民の立場から、こういったケースを短絡的に「観光客のマナーが悪い!」「横暴な旅行客は帰れ!」「人が多すぎるから来るな!」あるいは「外国人旅行客来るな!(これは全くの的外れということは前述したが)」と一喝するのは違うかなとは思っている。

 

前述したとおり、軽井沢にとって、観光はこの町を支える一つの産業の柱である。これにより、町に雇用が生まれ、経済が回り、文化が育まれる。マナーの悪い観光客個人に問題をなすりつけることは短絡的であり、軽井沢町全体(町政・企業・町民・そして別荘族など、あらゆるステークホルダー)が協力しあい、社会構造の根本から解決を目指すべき問題だ。

 

誰が悪いか、というように個人に問題をすりつけるのではなく、どのように交流人口をうまく管理するか、という事を考えていくべきだろう。人気スポットの周辺に、軽井沢町が団体バスの駐車場を用意するとか、しなの鉄道や西武グループと連携してパーク・アンド・ライドをもっと啓蒙するとか(やっているのかもしれないが認知率低い気がする)、軽井沢側がイニシアティブをとれることもある気はする。要は、どのようにうまく管理するかを、自治体側が考え、施策にし、明確に示していくことが大事なのだ。

 

最近では観光公害の実態調査を政府主導で実施していたりするので、「観光立国」を目指して国全体がこの問題に取り組み始めていることは確かである。


通行に課金をすることで渋滞を解消しようとする取り組みも検討されているとか。鎌倉と京都に加え、軽井沢と神戸でも、今後実証実験が行われるかもしれない。

 

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出典:国土交通省 http://www.mlit.go.jp/common/001200868.pdf

  

 

これは、軽井沢という観光地が、その魅力を維持しながら、どのように健全に発展していくべきかという、「サステナビリティ(持続可能性)」の問題でもある。奇しくも、直近の2017年は、国連が "International year of sustainable tourism for development" と定めた年であった。

 

 

 

住んでみると、軽井沢はいろいろな問題を抱えている町ということが見えてくる。大切なのは、その現実をきちんと直視した上で、うまく向き合っていくことが大事ということだろう。すぐには解決できないこの問題ではあるが、ひとりの軽井沢住民として、これからも考えていきたいと思っている。

 

  

 

 

今回は、軽井沢にある「オーバーツーリズム」という問題について、その現実的なところをまとめてみた。

 

軽井沢に移住しようと真剣に検討している方は、軽井沢の住民が悩まされているこの問題をきちんと理解した上で、移住するしないを判断すると良いと思う。

 

ということで、このブログ記事が、いつか誰かの役に立ちますように。

 

 

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このブログについて:とあるIT系企業に勤める会社員が、軽井沢から東京に新幹線通勤して、きちんと仕事がまわるのかを実験している記録です。新幹線通勤しようと思った背景はこちらの記事に書いています。

 

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